「呪術廻戦」の大ヒットはオープニングアニメが全て!この演出が物語へと観客全員を引き込んでいく。無意識にではなく、あえて理論で理解する!呪術廻戦を100倍楽しむ方法!
INDEX
■カメラのドリー。全てドリー。カメラが動く。ああ、このライブ感よ。。。
1「呪術廻戦」」のタイトルバック。
2この後ほぼ全てのカットでカメラが動きます。
・ズームイン…レンズのみでワイドから、アップへ。
・ズームバック…レンズのみでアップから引きへ。
・ドリー…カメラ自体が横や縦に、そして被写体へ、スライドして動く撮影
・パーン…カメラは据え置きで、レンズだけ縦横に振るという撮影方法
全ての撮影技法を駆使して、画面を動かしています。徐々にその動きは躍動感を増します。
ここではあえて「カメラ」の存在を全面に出しています。見る側も「カメラがある」と意識して見てみてください。面白さ100倍になります!
3序章、プロローグ。ゆっくりと動き出します。
・伏黒恵のシーン…ゆっくりズームイン。そしてゆっくりパーンダウン。
・釘崎野薔薇のシーン…ゆっくりズームイン。ゆっくりドリー。
・狗巻棘のシーン…カメラも一緒にエスカレーターの乗ってドリー。
・パンダ先輩のシーン…左から右へゆっくりドリー。
・七海健斗のシーン…パンダと同じく左から右へゆっくりドリー。
・禪院真希のシーン…ゆっくりズームイン。
・真希の眼鏡で初めて「呪霊」が出てきます。
ゆっくりとゆっくりと。ゆっくり「呪い」の世界に我々を引き込んでいきます。脳の中の概念をここで現実の世界から、「呪い」が蔓延する世界へ切り離していくのです。優しく。ただ本当は恐ろしく、気味の悪い世界へ。【誘う】まさにこのことがピッタリ合う演出です。すごいなあ。本当にすごい。。。
■MV、音楽編集のオーソドックスな手法は、音節手前でカットを切り替える。
例えば、MVやPV。音楽に合わせる通常の動画編集は、「音節で切り替える」「音節に合わせてカットを変える」がオーソドックスな手法です。音楽というものは大変よくできた芸術作品であり、2拍子、4拍子といったリズムを最大限利用した「ツール」と言えます。人間は、このリズムというものを、無意識に感じながら、音楽と映像を脳内で「雰囲気」を構築します。
「音楽のリズムに合わせて、映像を編集する」
これが一番、人間にしっくりくる「編集」方法なのです。厳密にいうと「音節」直前、ほんの少し(業界的にいうと5フレ)手前で、カットを変えます。
※「フレーム」1秒30フレーム。テレビ業界では、1秒間をさらに30に区切り編集します。1秒間30コマ。
これがちょっとでもズレたりすると、なんとも言えない「違和感」が生じてしまいます。
つまり音楽映像の編集は、「映像」が主役ではなく、「音楽」が主役。「音楽」に合わせて、映像を編集しなければいけないのです。これを「映像」をひとまず繋いで、その後に「音楽」を乗せると、音楽と映像がバラバラ。
「リズム感がない」という、映像になってしまうのです。
■「違和感」を逆手に取った呪術廻戦のオープニング。絶妙な浮遊感。五条悟の持つ“無限感”を無意識に感じさせる編集の超絶技法。
呪術廻戦のオープニングはこのリズムがズレた「違和感」をあえて逆手に取り、完璧なまでに「浮遊感」を感じさせる編集技法を使っています。
五条悟が鉄塔の上に立っている場面。音楽はここの部分です。
―オープニングタイトル「廻廻奇譚」EVE―
「怨親平等に没個性
辿る記憶に 僕に
居場所などないから〜♫」←ココです。
・ここまで、基本、音節に合わせて編集してます。
・ここで急に、1拍手前でカットを変えているんです!これがすごい!
・編集マンなのか、監督なのか、わかりませんが、確信犯的にカットのリズムを変えてるんです。一拍手前から。ここの音は裏声で、「らー♫」を伸ばすビブラート。この音楽に合わせて「浮遊感」を倍増させているのです。“浮遊感”。浮いているという存在感。現実ではありえない、空中に存在するという違和感を、違和感と感じさせないまま描写しているのです。
・ここが全てです。「呪い」にまみれた世界に、異端の人間がいる。呪術師。そのトップである五条悟。これで「呪術廻戦」の世界観が全て映し出されたいるのです。
・しかも、空中ドリー。ドローン撮影みたいな感じですね。右から左へ。躍動感。ライブ感。
カメラが動くということは「ライブ感」が半端なく出るんです。
・そしてさらに、バストショット(胸から上)でアップに変えて、もう一度ドリー。
・しかもハレーションを入れて、シャッター効果を入れ込む。素晴らしい!神々しさを感じさせます。“後光を背負う全能の神”のようなイメージ。
音節から1拍早いカットの切り替え。それができる、その凄さ。何度も何度も見返してみましょう!こんな目線で見ればまた面白さが倍増します。
■五条悟の指先から放たれる「光」。訳のわからないところからのズームバック。「術式」とはなんぞや?「呪力」とはなんぞや?光か闇か。それを具現化した演出がすごい!
・さらに、このほんの少し後、五条悟登場のカットがもう1つ出てきます。ここもすごいんです。スローで再生してみてください。
・後ろのビルから「ズームバック」しているのです!しかも五条悟の一瞬アップになる残像が1カット差し込まれている。「残像効果」。あまりのスピードに視覚、脳が追いつかない。あえて残像カットを差し込む。アニメーションならではの技法だと思います。急激なズームバック効果をさらに印象強くさせています。
―オープニングタイトル「廻廻奇譚」EVE―
「闇を祓って 闇を祓って
夜の帳が下りたら合図だ〜♫」←ココです。
相対して 廻る環状線
戯言などは 吐き捨ていけと」
・このズームバックの効果は「スピード感」。
・しかも髪が一本一本なびかせている描写。風で靡く髪。よくファッションモデルとかは風で髪を靡かせる写真ありますよね。躍動感です。風に抗う強い意志を持ち、強力なエネルギーを内に秘める、という暗示でもあります。
・アニメでこの1本1本なびかせるなんて、何枚原画が必要なのか。アニメの世界はよくわからないのですが、CGではなく作画のはずです。手間がかかっているカットなんです。
・指先から放たれた「術式」。その先はどこへ向かうのか?一瞬カメラがパーンで追いかけようとするのですが、カット編集で飛びます。カメラも追いつかない。そんな演出を仕掛けてくる。これもまた凄い!
・アニメでこそ仕掛けられる素敵なトリックです。見事です。
・アニメが持つパワーを信じて、とてつもなくレベルの高い演出をしています。すごい!
・実は「鬼滅の刃」でも、スピード感を演出するためこの「残像効果カット」を差し込んでいるところがあります。我妻善逸が初めて「雷の呼吸」を披露する場面。凄まじい閃光と風。
一瞬、善逸を映し出さず、「無」の存在にして、視覚が「早すぎて見えない!」というアニメーション効果を出していました。今のアニメーターは本当にすごい!監督がすごいんです!
■物語全ての予告編になっている、伏線の張り方。オープニングで謎を仕掛けている。罠を仕掛けている。「こいつは誰なんだ?」「この人は誰?」
第1話から、このオープニング。登場してきてないキャラクターも目白押しです。あえてこんなオープニングの構成。伏線を張っているのです。「この人誰?」「こいつは誰だ?」「敵か?味方か?」。
そして、呪術高専のみんなの「術式」を開示。映像だけで示唆しています。「こいつはどんな技を使うんだ?」。期待感をとてつもなくあおってきます。煽りまくりです!こんだけ煽られるともう「ワクワク感」しかありません!
「呪術廻戦」エピソード1の天才的オープニング演出!ただ身も心もありのまま委ね、楽しんでいきましょう!
次回はシャープ13。第13話からのエピソード2のオープニングを分析してみましょう!
ありがとうございました!!